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はじめての方へ。
研究者としてキャリアを始め、バイオインフォマティクスの会社を起業しました。17年になります。
いまは、ライフサイエンス×AIを事業にする仕事と、いろいろな業界の経営者や、挑戦する人と話すことに、いちばん時間を使っています。
ここでは3つのことを書いています。
・解析の道具とデータの早見(朝)
・技術を事業にするときの学び(昼)
・異業種の経営者との対話から気づいたこと
技術を事業にしたい人、新しい挑戦を始めたい人とつながれたらうれしいです。
起業して最初の1年、いちばん大変だったのは営業でした。
何者でもない自分に、仕事を頼む理由はない。
そこで、起業前から仕込んでいたことはブログでの技術的な発信。
そして、直接対面してからの雑談が営業の決め手でした。
専門的な引き出しを蓄積しているので、お客様との話題には困らない。
営業が苦手な専門家は、売り込むより、情報発信と相手の困りごとを聞くほうが向いているのかもしれません。
【保存版】日本人のゲノムと変異の頻度、どこを引くか早見。
・日本人の全ゲノムの頻度:jMorp(東北メディカル・メガバンク機構。版ごとに人数が増える)
・日本人の参照ゲノム配列:JG シリーズ(jMorp で公開)
・日本人の頻度と gnomAD を1画面で:TogoVar
・京都大学のデータベース:HGVD(Human Genetic Variation Database)
・臨床での解釈:MGeND(臨床ゲノム情報の統合データベース)
・個人レベルのデータ(制限公開):JGA(NBDC の審査を経て利用)
・GWASの結果:NBDC ヒトデータベース
gnomAD では珍しい変異が、日本人では珍しくないこともある(逆もある)。病的かどうかを考える前に、集団ごとの頻度を見比べる。保存推奨。
解析で、いちばんよくある失敗の1つ。
ゲノムの版が違うデータを、そのまま比べてしまうこと。
座標がずれて、本当はない差が出てくる。
会社の数字でも、同じことが起きると思います。
部署ごとに「売上」や「案件」の数え方が違うまま比べると、本当はない差で議論が始まる。
比べる前に、定義をそろえる。
地味ですが、これだけで会議はずっと短くなります。
【保存版】小さなRNAと、長い非コードRNAの解析道具早見。
・miRNAの定量と新しいmiRNAの探索:miRDeep2
・小さなRNAのデータの品質と由来の確認:miRTrace
・ウェブで一通り回す:sRNAbench(sRNAtoolbox)
・miRNAの名前と配列:miRBase
・miRNAの標的の予測:TargetScan/miRDB
・非コードRNAをまとめて引く:RNAcentral/Rfam(検索は Infernal)
・新しい転写産物がコードするか、しないかの判定:CPC2/CPAT/FEELnc
・lncRNAの注釈:GENCODE
miRNAの名前は、miRBase の版によって変わることがある。論文の結果と比べるときは、まず版をそろえる。保存推奨。
米国人類遺伝学会(ASHG)2026が終わって、帰国の途につきます。
4日間の学会では多くのことが得られたので、整理して社内で共有・フィードバックしつつ、今後の事業戦略にも活かしていきます。
空港へ向かうバスが偶然一緒になった昔の同僚との議論で、
「AI活用が大きなテーマになる中、AIに質問したり指示を出したりできる人材育成が重要」という結論になりました。
バイオインフォマティクスやデータ解析はAIで加速度的に進みますが、「データの意味を理解し洞察を得て、データを活用する、社会実装する」ことは人間だけが担うテーマで、生成AIの普及でこのテーマがより重要というか目立つようになってきました。
すべての生命科学研究者がAIを活用して、データから洞察を得られるように、より早く研究が進められるように、活動していきたいとおもった、そんな5泊の出張でした。
今から飛行機に乗って帰国します!
研究で評価される道具と、お金を払ってもらえる道具は、別物だと思っています。
研究では、新しくて、精度が高いことが評価される。
事業では、相手の困りごとが1つ減るかどうかで決まる。
〔本人確認:17年の仕事で「最新の手法より喜ばれたこと」の実例を1文。例「最新の手法より、結果を明日の会議で説明できる形にしたことの方が喜ばれた」〕
技術を事業にするとき、最初に問うのは「何ができるか」ではなく、
「誰の、どの判断が楽になるか」。
解析の仕事で、早く結果を出す人に共通していること。
手法に詳しいことより、「どこに何があるか」を知っていること。
公共のデータ、すでにある道具、相談できる人。
ゼロから作る前に、すでにあるものを探せる人は速い。
事業も同じだと思います。
新しいことを始める人ほど、最初に「地図」を持つことが効く。
その分野で、誰が、何をしているか。
それを知るだけで、遠回りの半分は避けられます。
他人に頼ることも、ときには重要です。
研究者だった僕が、会社をつくったときの話。
背中を押してくれたのは、
まわりの環境が大きく変わったことと、
身近な人が応援してくれたことでした。
最初の1年で、いちばん大変だったのは営業。
何者でもない自分が、仕事を取ってくる。
これが本当にきつかった。
研究者だったことで、苦労したこともあります。
研究は、周りの支えはあっても、最後は自分ひとりで完結することが多い。
でも事業は、チームで戦うもの。
チーム戦に慣れるまでに、時間がかかりました。
一方で、得したこともあります。
専門の引き出しが多いので、お客様との雑談には困らなかった。
環境が変わるときは、挑戦のタイミングなのかもしれません。
応援してくれる人がいるなら、なおさら。
AI導入の相談を受けたとき、最初に聞くことは3つです。
①その結果で、誰の行動を変えたいか
②いま、その行動は何を根拠にしているか
③結果が出たら、社内で誰が受け取って動くのか
モデルやデータの話は、そのあとで十分。
この3つに答えられない相談は、技術的にできても、だいたい途中で止まります。
最初に「誰が動くか」を決めておくと、小さく始めても前に進みます。
【保存版】リボソームプロファイリング(Ribo-seq)解析の道具早見。
・品質の確認と P サイトの補正:riboWaltz/RiboseQC
・翻訳されている ORF を探す:RiboCode/Ribo-TISH/ORFquant/Ribotricer
・翻訳効率の差を検定する:Xtail/riborex/deltaTE/anota2seq
・公共データをゲノム上で見る:GWIPS-viz
・前処理のコツ:先に rRNA の配列に当てて、外してからマッピングする
Ribo-seq の読み数の差は、mRNA の量の差でも起きる。同じ検体で RNA-seq も取り、翻訳効率として比べる。保存推奨。
研究者出身の経営者として、異業種の経営者との対話から学ぶことが多くあります。
先日、店舗やEC事業を営む経営者と話して印象に残ったのは、自社の困りごとをAIで解決し、その仕組みを新しい事業へ育てる姿勢です。
研究では技術の新しさや精度に目が向きますが、現場では「何に困り、どうすれば仕事が回るか」が出発点になります。
また、正しい分析や提案だけでは人は動きません。相手の事情を理解し、納得と行動につなげることも経営の仕事です。
技術を見る目に加えて、現場と人を見る目を磨く。異業種との対話は、その大切さを教えてくれます。
がんのゲノムで、染色体の外に飛び出したDNA(ecDNA)や複雑な増幅を、全ゲノムのデータから一続きの手順で探せるようになった——AmpliconSuite が Nature Methods に掲載され、conda や Docker で入る。
これまでは、AmpliconArchitect で増幅の構造を組み立て、AmpliconClassifier で ecDNA か、切断と融合の繰り返し(BFB)か、直線的な増幅かを分ける流れを、それぞれ回す必要があった。
AmpliconSuite は、FASTQ や BAM から分類までを1本にまとめている。以前は必要だった最適化ソルバー(Mosek)のライセンスも、いまは不要で、無料のソルバーで最後まで回る。
ただし入力はペアエンドの全ゲノム。エクソームやパネルでは使えない。また中核の AmpliconArchitect は研究用途のライセンスで、営利目的では使えない。
会社の売上が、1億円前後で止まっていた時期が長くありました。
がんばっても、社長は楽にならない。
社員も疲弊していく。
〔本人確認:当時、何がいちばんの原因だったと思うか。例「判断も営業も解析も、ほとんどが自分を通っていた」〕
変わったのは、管理職を採用して、育てて、任せるようにしてからでした。
組織として動けるようになって、売上も伸び、ボーナスも出せるようになりました。
小さな会社の成長を止めているのは、市場より先に、社長自身の手の数なのかもしれません。
【保存版】GWASのサマリー統計、どこから取るか早見。
・まず探す窓口:GWAS Catalog(サマリー統計の全文が置かれた研究だけを絞り込める。GCST の番号で引く)
・取ってすぐ解析に使う:IEU OpenGWAS(R の ieugwasr や TwoSampleMR から直接引ける)
・UK Biobank の形質をまとめて:Pan-UK Biobank(祖先集団ごとの結果もある)
・フィンランドのバイオバンク:FinnGen(データフリーズごとに公開)
・日本人:バイオバンク・ジャパンの結果は、理研IMSのデータベースと NBDC ヒトデータベース(hum0014)から
・精神疾患:PGC(Psychiatric Genomics Consortium)
・身長・BMI などの体格:GIANT
・形質どうしの遺伝的な相関を見渡す:GWAS Atlas
取ってきたら、まずゲノムの版(GRCh37か38か)と、効果アレルがどの列かを確かめる。ここを取り違えると、符号が逆のまま解析が進む。保存推奨。
今週から、ここでの発信を少し広げます。
これまでは、解析の道具やデータの早見を中心に書いてきました。保存してくれる人も、質問をくれる人も増えて、本当にありがたいです。
一方で、自分がいちばん楽しいのは、いろいろな業界の経営者や、挑戦している人と話しているときだと気づきました。
研究者から起業して17年。
技術を事業にするときの学びや、人との対話から気づいたことも、書いていきます。
道具の早見は、これからも朝に続けます。
科学技術と経営をつなぐ。
そんな発信にしていきたいです。
【保存版】単一細胞RNA-seqから、コピー数の変化を推定する道具早見。
・定番:inferCNV(正常な細胞を参照にして、染色体の区間ごとの発現の偏りを見る)
・Python から:infercnvpy(Scanpy の AnnData のまま回せる)
・参照の細胞がなくても:CopyKAT(がん細胞と正常細胞の見分けもする)
・アレルの情報も使う:Numbat(SNPのアレルの比を足して、サブクローンの系統まで推定)
・速く、大規模に:SCEVAN
・空間データで:CalicoST(空間トランスクリプトームで、アレルごとのコピー数と腫瘍の広がりを推定)
発現から推定したコピー数は、あくまで間接的な証拠。拾えるのは、染色体の腕レベルの大きな変化まで。細かい増幅は、DNAのデータで確かめる。保存推奨。



