今無ヅイ retweeted
11/7(土)に横浜で開催される超かぐや姫!オンリーツクヨミ物語にて、かぐやぬいと出会った大学生芦花さんの漫画『君がとなりに。』を頒布します。30pくらいです。
以下、サンプルとして冒頭7p分を公開します(0/2)
#超かぐや姫超短編
『四人四麺』
休日のお昼。四人で入った蕎麦屋にて。
彩葉「いただきます」
ずずずっ。
真実「いただきまーす!」
ずばーーーーっ
芦花「いただきます」
ちゅるん
かぐや「いっただっきまーす!」
ずぞーーーーっ
「…………」
かぐやが箸を止めた。
「……芦花?」
「なに?」
「美容系インフルエンサーって食べ方も美人なの?」
「どういうこと!?」
「芦花、麺すすれないんだよね」
「彩葉」
「えー!? かわいい!!」
「かわいくない!」
#超かぐや姫超短編
『ふにゃふにゃでほにゃほにゃ』
「うひぇ〜……酔っ払った〜」
彩葉の口から、なんとも情けない声が漏れた。
週末の夜。彩葉とかぐやの暮らすマンションでは、芦花と真実を招いての宅飲みが開催されていた。ローテーブルにはかぐやが用意した料理の皿が並び、空いた缶ビールの数もそろそろ数えるのが面倒になってきた頃合いである。
もっとも、飲んでいるのは彩葉、芦花、真実の三人だけ。お酒の飲めないかぐやは、グラスに注いだジュースを片手に、上機嫌な三人を上機嫌に眺めていた。
「彩葉〜、お水飲んだ?」
「のんだぁ〜。えらいでしょ〜」
「えらいえらい♡」
キッチンから戻ってきた彩葉は、ふにゃふにゃと笑いながらリビングを見渡した。頬はほんのり赤く、普段の落ち着いた雰囲気もどこへやら、すっかり出来上がっている。
そんな彩葉を、ソファに座った芦花が眺めていた。
「彩葉〜」
「ん〜?」
「おいで〜」
芦花がにこにこと笑いながら、両手を広げた。
「いくぅ〜」
彩葉はなんの躊躇もなく、ててて、と芦花のところへ歩いていく。
そして、そのままぽすんと隣に腰を下ろすと、芦花の肩にこてんと頭を預けた。
「えへへ〜」
「よしよし〜。酔っ払っちゃったのねえ〜」
「うん〜……」
芦花が彩葉の頭を撫でる。彩葉は目を細め、気持ちよさそうにされるがままになっていた。
「……ねえ、かぐやちゃん」
「ん〜?」
テーブルの向こうで一部始終を見ていた真実が、隣のかぐやに声をかける。
「あれ、いいの〜?」
「え?」
かぐやはソファの二人を眺め、それから少し首を傾げた。
「なんか、こう、芦花と彩葉がここまでもちゃもちゃしてるの珍しいなって……」
「ね〜。あんなの初めて見たかも」
「ね〜」
二人が見守る先では、芦花が相変わらず彩葉の頭を撫でている。
「彩葉、かわいいわねえ〜」
「ろかもかわいいよぉ〜」
「ふふっ、ありがと〜」
「んふふ〜」
「…………」
「…………」
真実とかぐやは顔を見合わせた。
「……なんか、すごくない?」
「すごいねえ……」
普段なら、どちらかが照れて逃げ出しそうな光景である。
ところが今夜の二人には、そんな気配が微塵もない。芦花はご機嫌で彩葉を撫で続け、彩葉はすっかり甘えきっている。
かぐやはしばらくその様子を眺めていたが、ふと思いついたように両手を広げた。
「彩葉〜、こっちおいで〜♡」
「いくいく〜♡」
彩葉がぱっと顔を上げた。
そして、するりと芦花の腕から抜け出すと、今度はかぐやのところへ一直線。
「わ〜い! 彩葉ゲット〜♡」
「えへへ〜♡」
ぎゅう、と抱き合う二人。
一方、ソファには両手を広げたままの芦花が取り残されていた。
「…………」
ぱちぱち、と瞬きをする。
「……彩葉にげた〜」
「んふ、あはははっ!」
真実がとうとう吹き出した。
目が覚めたとき、隣には誰もいなかった。
手を伸ばすと、シーツはもう冷たくなっていた。
枕元のスマートフォンには、一件のメッセージ。
『おはよう。朝早くてごめんね。起こすのも悪いから、先に仕事行ってくる。ちゃんと朝ごはん食べてね』
彩葉からだった。
時計を見る。
もう、午前八時半。
「……仕事、か」
思わず笑ってしまった。
そうだ。
仕事があって、生活があって、日常がある。
そんな当たり前のことを、どうして忘れていたんだろう。
昨夜のことを思い出す。
あの声も、あの言葉も、全部本当だった。
夢なんかじゃない。
それなのに。
「……おはようくらい、言いたかったな」
誰もいない部屋に、その声だけが残った。
もう何度目かの、逢瀬。
「……彩葉、明日は?」
「朝から仕事。ちょっと早いんだ」
「そっか」
芦花はベッドの上で膝を抱えた。
彩葉が脱ぎ散らかした服を拾い、椅子に掛ける。そんなことも、いつの間にか当たり前になっていた。
「……泊まっていけば?」
「明日の資料、家に置いてきちゃって」
「そっか」
「……ごめんね」
「謝らないでよ。わかってるんだから」
彩葉は困ったように笑った。
その顔が好きだった。
十年前から、ずっと。
「……ねえ、彩葉」
「ん?」
「次はいつ会える?」
「来週かな。水曜日なら空いてると思う」
「じゃあ、水曜日」
「うん」
彩葉が身を屈めて、芦花に口づける。
昔は、そんなことを夢に見るだけで幸せだった。
「……もう一回」
「ふふ、甘えん坊だね」
「うるさい」
もう一度、唇が重なった。
それでも彩葉は、帰っていく。
ドアが閉まる音を聞いて、芦花はベッドに倒れ込んだ。
「…………はぁ」
十年間、片想いで満足していた。
好きな人がいるだけで幸せだなんて、本気で思っていた。
それなのに。
「……もっと、欲しい……」
こんな自分、知らなかった。知りたくなかった。





