今年は左手の怪我で彼岸花の時期を逃した。
二十五針縫い、神経も傷めた。
猛烈な違和感や多彩な痛みが中々消えない。
あゝ、一刻も早く、山深く、歩き疲れ、凩に気付かされ、畏怖すべき旅の途中で、、、茫然となりたい。
神すら惑う鳥居。
安永の時代に建立された造形美は依然、目立った欠損こそないものの、その機能は絡まる鬱蒼により幕を下ろしていた。
我が物顔の蜂が風を切る
払われる事のない蜘蛛の輪郭
私は茫然と魅ていた
秘すべき理の不全を
比較的知名度の高い廃集落より更に山深い僻地に在る、廃集落の廃神社。
人々がかつて往来していた頃から言えば、かなり様変わりしている筈である。
けれど、確かに感じられる気がした。
在りし日を。
座り込んだ私に蟻が這う。
少しの間、目を閉じた。
風が乗せる、杉の香りが心地よい。
その鳥居、在る筈のない場所に在るかの如き違和感の漂う────
片時も目を離さないことで生じる夢幽感。私は体外へ離脱してゆくかのよう。
全て埋没する迄、そう永くはないだろうか。
故に私は忘れないだろう、あの、、、余念なき悲壮美を。
標高九百三十メートルの僻地。
とある廃集落の廃神社。
これ程の場所に石造鳥居と狛犬が残存する事実は非常に得難いと、近頃の旅を通してより実感する。
幽玄な非日常を享受するのであれば、孤独である必要がある…そう思っている。
「霊獣ノ形骸」 零
所謂、廃神社の狛犬。
守護すべき神域を喪失し、かつての崇敬の残留思念すら風化を辿った。
無論、動くことはなく自然へ委ねるのみ。
けれど、そのさまに、美を憶えるのは私の咎だろうか。
虚に、阿吽など在りもせず。
















































